あなたが理学療法士を目指しているのならば、4つの壁を越える必要があります。
理学療法士になるためにどんな過程を経るのでしょうか?
それを知るだけで安心しますよね。
今回は、現役理学療法士の私が理学療法士になるにはどういう壁があり、どう乗り越えていけば良いかを経験を交え解説いたします。
Contents
理学療法士ってどんな職業?

理学療法士ってどんな職業かご存じですか?
あなたはまだ理学療法士になっていないのでパッとイメージはつきにくいかもしれません。
ただこれから目指そうと思っているならある程度説明できた方がいいですね。
理学療法士の定義については「理学療法士及び作業療法士法」で定められています。
身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう
(引用:理学療法士協会)
なんとなくイメージできましたか?
要は、「身体に障害がある人が生活しやすくなるように、運動させたり器具を用いたりして回復させていきましょう」ということです。
文章では簡単に書いてありますが、実際は考えたり悩むことが多いです。
だからこそその人が回復できたときの喜びは何にも変え難いのです。
身体のことを通してその人の人生に関われる職業だから、たくさんの感謝を頂ける素晴らしい仕事だと感じています。
苦しんでいる人の希望になれる仕事ってかっこいいですよね。
私もそんな姿に憧れたから4つ壁を乗り越えることができました。
次からは4つの壁についてお話ししていきます。
1つ目の壁:入学試験
理学療法士になるためにはまず、資格を取れる学校に行かなければなりません。
4年制大学、短期大学(3年間)、専門職大学(4年間)、専門学校(3〜4年間)のどれかを選びます。
養成校は全国各地にあり、その数は2019年度現在で266校(※)もあります。
(※公益社団法人日本理学療法士協会HPより)
これだけあると一体どの学校を選べばいいのかわかりませんよね。
そこで以下にそれぞれの特徴をまとめましたのでご覧ください。
4年制大学
理学療法を学べる4年制大学は、国公立と私立合わせて111校あります。
付属の大学病院があるため研究が盛んに行われているのが特徴です。
そもそも大学は学術研究などによりその分野を深く追求していく教育機関です。
「なぜ?」を追求することで論理的な理解による学びを得られます。
さらに専門分野とは関係のない分野も学ぶことで幅広い知識が身につきます。
また4年制大学は比較的時間に余裕があります。
自由に使える時間が多いため、人生経験を増やしてあなたらしい生き方を模索しやすいのも特徴です。
私は4年制大学を卒業したのですが、理学療法士としての勉強だけでなく、自分の生き方について色々と経験できたことが最大のメリットでした。
4年制大学に進んだ方がいい方は以下の内容に当てはまる方です。
- 学術研究に興味がある
- 理学療法士について深く知りたい
- 自分の人生を深く見つめたい
短期大学
短期大学は全国に6校ほどです。
短期大学はその名の通り大学の課程を短期で習得できる教育機関です。
一般的には2年間ですが、医療系など専門知識や経験が多く必要なコースは3年間通います。
本来ならば4年かかって学ぶところを、短大ではギュッと詰め込んで勉強していきます。
4年制大学同様に一般教養の単位も習得しなければなりません。
短大の強みは4年制大学の教養力と、専門学校の実践力どちらも得られるという点にあります。
以下に当てはまる方は短期大学をお勧めします。
- 資格修得まで早く終わらせたい
- 幅広い分野の知識を身に付けたい
- 一般教養と同時に即戦力としての技術を身に付けたい
専門職大学
専門職大学は1校しかありません。
とは言っても、専門職大学自体あまり馴染みのない名前ですよね。
専門職大学は2019年4月から誕生した学校制度で、専門学校と大学の良さを組み合わせようというものです。
つまり幅広い知識や教養を身につけつつ、社会に出て活躍できる教育をするのが専門職大学というわけですね。
4年制と短期がありますが、理学療法を学べるのは現在は4年制だけです。
短期大学と違う点は、専門職大学は産業との連携を重視するという点にあります。
地域や社会の課題発見力、課題に対する解決力、解決をサポートする創造性を学ぶことで、その業界で深く活躍し、人生をより豊かに生きられる人材を育てることを目標としています。
しかし始まったばかりの制度であるため、具体的にどのような結果が得られるかはハッキリと言えません。
専門職大学に進学したい方は以下に該当する方です。
- 教養力と実践力どちらも身につけたい
- 対応力や創造力を身につけて第一線で活躍できる理学療法士になりたい
- 人生にも活かせる考え方や能力を身につけたい
専門学校
専門学校は全国に147校あります。
4年制が63校、3年制が84校(盲学校2校含む)という内訳です。
専門学校はその職業の専門性を高める学校です。
そのため大学と比べ一般教養の授業の割合は少ないのが特徴として挙げられます。
授業のほとんどが専門教育で、臨床で即戦力となるような理学療法士を目指します。
そのぶん授業は過密日程で行われるため、時間的余裕が少ないです。
3年制であればなおさらですね。
常に理学療法のことを考える環境を作ることで、臨床脳を作っていけるのが専門学校の魅力の1つです。
以下の方は専門学校に進むことをお勧めします。
- 理学療法士になりたいという確固たる信念がある
- 卒業後、すぐに活躍できるような理学療法士になりたい
- 理学療法の基礎だけでなく即戦力となれる技術を高めたい
行きたい学校を決めて対策をしよう!
上記のメリットは理解できましたか?
どんな環境で過ごすかは非常に大事なことなので、自分に合った学校を選びましょう。
ただどの学校に行くか、国公立か私立かで、必要な学費が異なります。
以下に卒業までにかかる学費の目安を表にしたので参考にされてください。
国公立 | 私立 | |
---|---|---|
4年制大学 | 240万円 | 550〜800万円 |
短期大学 | -(国公立なし) | 350〜500万円 |
専門職大学 | -(国公立なし) | 533万円(※) |
専門学校(4年) | -(国公立なし) | 500〜800万円 |
専門学校(3年) | 258万円(※) | 350〜500万円 |
(※該当校が1校のみのため、その校の学費を算出)
大学や専門学校に通うにはある程度の金額が必要です。
さらに入学したら学費のみならずその他の費用もかかります。
- 教科書代(30万円程度)
- 実習着代(2万円程度)
- 臨床実習に伴いかかる費用(0円〜50万円程度)
など
専門書や実習着はやはり高額な出費になります。
専門書に関しては何度かに分けて購入しますが、1度の支払いで5万円程するためしっかりと準備が必要ですね。
臨床実習は県外で行うこともあり、その際の移動費や宿泊費は自己負担です。
詳細やどう対処したかは「第3の壁:臨床実習」の項で書いていますので、そちらを参考にされてください。
養成校は全国に多数あるため、どこに行くか迷うでしょう。
そんな時は学校の雰囲気や学生、先生の様子を知るのが1番です。
そのためにはまずオープンキャンパスに行きましょう。
気になるところが複数ある場合は、日程が被る可能性もあるため早めに調べておくといいですね。
志望校を選ぶ基準の1つに国家試験の合格率があります。
学校のホームページに、その学校での合格率が載っているので参考にしましょう。
入学試験の内容は学校によって様々です。
AO入試と一般入試がありますが、行きたい学校の入試内容を調べて対策を打ちましょう。
筆記試験が必要な場合は理科が重要になることが多いです。
生物と物理を選択することで、入学後の勉強にも付いていきやすくなります。
志望校に合わせた教科選択をしていってくださいね。
2つ目の壁:単位修得
大学や専門学校に入って進学していくために、絶対に必要なのが単位を修得することです。
単位とはその科目を理解できたかできていないかを表す指標です。
単位認定してもらえれば、その科目は理解しているということですね。
その科目の講義への出席日数と試験で、単位を修得したと認定してもらえるかが決まります。
出席日数を満たすことでその科目の単位を得る資格が与えられ、試験で認定の可否が決まるという仕組みです。
私が通っていた大学では、1つの科目は全15回の講義があり、そのうち10回(2/3)出席することで試験資格が与えられるというものでした。
テスト内容はその科目によって実技や筆記テスト、時には両方あります。
60点以上が単位認定の基準で、それ未満だと赤点となり再試験になります。
私の大学は合格するまで試験を行っていたため、単位を落とすことはほぼありませんでした。
学校によって単位認定の基準や進学に必要な単位数が違うため、入学後は確実に確認しておきましょう。
3つ目の壁:臨床実習

カリキュラムには病院や介護施設などでの臨床実習も含まれます。
実習は病院や施設で最低でも20週間(※)行わなければなりません。
(※厚生労働省 理学療法士作業療法士養成施設指導ガイドラインより)
ただしこれは最低ラインなので、学校によってはもっと多いところもあります。
臨床実習は各学年で1回はあります。
最初は見学や体験程度ですが、最終的には8週〜10週の実習期間で患者さんを治療していきます。
実習の思い出はとにかく勉強したことと緊張がすごかったことですね。
それまでの勉強不足により実習指導者の方に迷惑ばかりかけていたのを覚えています。
緊張や不安は絶対にあるので、自分の成長のためと考え「わからないところはなんでも聞く」「悩みはなんでも相談する」という姿勢を貫けば絶対に大丈夫です。
せっかくなりたかった職業なのに、「実習が嫌で諦めた」とはならないように工夫していきましょう。
注意しておきたいのが、前述の通り臨床実習にかかる費用は自己負担です。
実習先が遠方であればその分の移動費、家賃、光熱費などを負担せねばなりません。
私の九州に住んでいる友達は沖縄や関東に実習に行っていました。
決して小さくはない出費です。
確実に対策を取らなければなりません。
私が通っていた大学では、学生同士で実習費用を積み立てしていました。
場所によっては近場で費用がかかりませんが、遠方の人は費用が大きくなり負担額に大きな差が出ます。
そのため毎月定額を積み立て、実習費用はそこから全て賄うという手段を取っていました。
あなたが入学する学校の先輩たちも、何かしらの方法でお金の壁を乗り越えてきています。
先輩に尋ねたり、自分たちで考えたりして対策をとりましょう。
4つ目の壁:国家試験
理学療法士になるためには国家試験に通らなければなりません。
これまでどれだけ頑張ってきても、最後の国家試験に通らなければ理学療法士としてスタートも切れないのです。
しかしご安心ください。
理学療法士国家試験の合格率は毎年高いです。
その年の問題により難易度は異なりますが、過去5年を見ても74.1〜90.4%が合格しています。
過去10年間の平均を見ても83.6%です。
ただし試験内容が簡単なわけではありません。
総得点(280点)のうち6割(168点)をとる必要があります。
人の命を扱う仕事だから難しく作られているのです。
しかしこれだけ多くの人が合格しているのは、それだけ勉強しているからです。
とは言っても1人で合格を目指すのは至難の業でしょう。
だから私の大学では5人組の班を作り、仲間と協力しながら乗り越えました。
学力に自信がない人でも、仲間と協力し、知恵を分け合いながら勉強すれば絶対に合格できます。
どうしたら受かるかを考えて一生懸命勉強しましょうね。
理学療法士になるには4つの壁を越えるべし!まとめ
理学療法士はリハビリを通して人に幸せを与えることができる素敵な職業です。
人生に関わる仕事ですから、簡単になることはできません。
しかしハードルの高いものではなく、1つずつ乗り越えて行けば確実になれます。
私は大学の友達が1番かけがえのない存在です。
なぜなら同じ夢に向かって、支え合いながらともに目指した仲間だからです。
どんなに難しいことに見えても仲間と頑張れば大丈夫だと信じています。
理学療法士だけでなく、何かやりたいこと、叶えたい夢があなたにもあるでしょう。
大切なことは、できると信じて1歩ずつゆっくりでもいいので、継続していくことです。
最後に、理学療法士になるために越えるべき4つの壁についてまとめておきます。
- 入学試験
- 大学・短大・専門職大学・専門学校から、自分に合った養成校を選ぶ
- 学費や学校の雰囲気・特色も見て判断する
- 単位修得
- 知識をつけて単位を取り、確実に進学する
- 臨床実習
- 実習では現場で活躍する理学療法士から学ぶ
- 実習には大きな金額が必要なので対策をしておく
- 国家試験
- ボーダーラインは6割以上の正答率
- 仲間と協力し知恵を分け合って勉強することが合格のカギ
なお、理学療法士になるために必要な実習については、以下の記事を参考にして下さい。
