「美容師になりたい」と美容室に就職したら、誰もが通るアシスタントの道。
「美容師」と聞けば、「あぁ髪を切るんだな」など、だいたいの仕事内容はわかりますよね。
「手に職を付ける」仕事の代表とも言えます。
他にも、カラーリングやパーマなど、世代を超えて出来るオシャレな仕事でもあります。
では美容師アシスタントの仕事内容とは、どんなものがあるのでしょうか。
この記事では美容師アシスタントの一日の仕事内容や仕事の本質にまで踏み込んで解説いたします。
あなたが本気で美容師アシスタントの仕事に取り組む覚悟なら必読の内容ですので、どうぞご覧ください。
美容師アシスタントの仕事内容はざっくり2つ
美容師アシスタントの仕事内容は、ざっくりサロンワークと雑務の2つに分けられます。
営業中はサロンワークに集中することが多いですが、手が空いた時には雑務もこなします。
例えば、洗濯するタオルが溜まったら洗濯機を回しておく、カラー施術の準備をしておく等。
何がサロンワークであるか、雑務であるかをはっきり分けることは難しいです。
「雑務」や「雑用」と言ってしまうと、誰でもできる下っ端の仕事と思われがちです。
ですが、どちらも辞書をひくと「たくさんの細かい仕事」と書かれています。
本当に細かいことが多いので、挙げればキリがありませんが、それがないと他の仕事が回らなくなるように、とても大事な仕事なのです。
美容師アシスタントの一日の仕事内容
サロン営業日の一日を4つの部分に分け、美容師アシスタントの仕事を紹介していきます。
オープン前の開店準備
お店のオープン前に、お客さんを迎える準備を行います。
美容院は清潔さを維持するために、綺麗に整える場所がいくつもあるので、てきぱきと要領よく行います。
掃除
前夜のレッスンや朝の練習でどうしてもフロアが散らかってしまうため、もう一度掃き掃除を行います。
たまに朝礼の時間ギリギリまで練習しているスタッフもいるので、細かい毛くずが残っている場合があり、特にセット面周辺は入念に行います。
また、ビルなどではなく戸建てのサロンなどでは植え込みがあることが多いので、サロン前の掃き掃除と同時に水やりも朝に行います。
タオルをひたすら畳む
前日の夜に干しておいたタオルを畳んでいきます。
日々のお客さんの数にもよりますが、100枚を超えることは普通にあります。
時には朝礼が終わってからオープンの時間までタオルを畳むことしかしていないスタッフもいます。
ホットタオルのセッティング
トリートメントなどの施術で使います。
タオルを数枚濡らし、タオルウォーマーにセットします。
予約数に応じて準備していても良いですが、お客さんが来店後に施術メニューを追加注文することもあるので、少し多めに準備しておきます。
濡らしただけですとニオイが気になるお客さんもいるので、コロンを使って香り付けを行います。
スチーマーのセッティング
こちらもトリートメントの際に使う道具です。
タンクに水を汲み、機械にセットして電源を入れ、朝一番のお客さんにも備えます。
前夜に排水タンクの水を捨てていないと、機械の準備時の排水があふれて朝から漏水騒ぎになり、仕事がもっと増えます。
私の居たサロンでは毎週のようにはありました。
シャンプー台のセッティング
前日の夜に綺麗にし、カビ等が発生しないように各付属品を取っている事が多いです。
それら付属品を朝に取り付け、セッティングします。
シャンプークロスの準備を忘れる人が多く、朝一番のお客さんをシャンプー台に案内してから、ハッと気づいて走って取りに行くことが多々ありました。
クロスの準備
まずは朝一番に来店するお客さんに備え、スタイリストのワゴンやセット面の近くに置いておきます。
そのほか、その日来店するお客さんのカラークロスやパーマクロスの数が足りているかチェックをします。
カラーリングやパーマの場合にはイヤーキャップやヘアキャップも必要なので、都度慌てないように、この時にまとめて準備します。
トイレの確認
営業後に掃除をしますが、朝の準備の際にも埃が舞ったりするので、もう一度綺麗であることを確認します。
見落としがちなのがトイレットペーパーの残量です。
残量が半分以下だとその日1日もたないので、新しいものに取り替えておきます。
お客さんの中には他の人が入った後に毛くずが落ちていることが気になる人も居るので、営業中でも時々確認します。
オープンから最終受付時間まで
営業中、アシスタントは常に動いています。
当日の予約状況を把握し、いつどこに人手が必要か、気を配っています。
ひたすらシャンプーをする
来店されたお客さんを順番にシャンプーします。
予約状況に応じて、カラーリングや縮毛矯正などの施術をしてからシャンプーをすることもあります。
サイドシャンプーやバックシャンプーがあるサロンでは、お客さんの好みを考慮します。
好みのシャンプー台が被ったり、埋まっていたりすると譲り合いや取り合いになり、時には睨まれる事もありました。
お客さんが来られる前に把握しておいたり、段取りや時間配分を考えておく必要があります。
髪の根元を見ながらのドライ
シャンプーし終わったお客さんの髪を乾かします。
この時の乾かし方によって、スタイリストのカットのし易さに繋がるため、集中力が必要です。
髪の生える向きによって、ドライヤーを当てる向きを変える必要があり、慣れないうちはずっと頭皮をチェックしていました。
1人1人向きが異なるので、正解がないため難しいのです。
スタイリストによって、またはお客さんによって、乾かさずにカットする場合もあります。
必死に素早くカラーリング
時間短縮のため、可能な限り2人でカラーリングを行います。
スピードと質が求められますが、慣れないうちはどうしても時間がかかってしまいます。
スタイリストや先輩アシスタントと一緒にカラーリングしながら、観察して真似をして技術を盗みます。
2人で行うことで差異が出てしまってはいけないので、必死に先輩に食らいつきます。
白髪染め、オシャレ染めがありますが、始めは白髪染めを担当することが多いです。
理由は薬剤の反応速度や塗り方です。
白髪染めは根元をしっかり染めたいのでペタペタと塗ってしまって良いです。
しかし、オシャレ染めは体温による化学反応で色味が変わってしまうため、同じ塗り方ができません。
また白髪染めのお客さんでも、肌が弱い方だとオシャレ染めのように塗る場合もあります。
手が足りない!パーマの補助
パーマ施術をするスタイリストに、時間短縮のために手元に道具を持っていきます。
そのため、ロッドの太さや必要な道具の順番なども把握する必要があります。
把握しきれない間は、指の間に3,4本ロッドを挟んで待機しています。
時々、ロッドが足りなくなる場合があり、無くなる前に取りに行く必要があります。
パーマ施術を一番近くで見られるので、後々の勉強になります。
ワゴンの位置や自身の立ち位置なども気をつけなければなりません。
怒濤のカラシャン(カラーシャンプー)
カラーをしたお客さんの規定時間放置後、シャンプー台で薬剤を流します。
テストに合格すると、先輩たちが他の仕事に集中できるように、テスト合格後すぐに仕事に入らせてもらえます。
そのため、カラシャンのテストに合格するとすぐにカラシャンの嵐になります。
薬剤が残っていると頭皮が荒れたり、洋服に色が垂れたりとトラブルになりますので、しっかりと2回洗います。
まず最初のお流しでしっかりと薬剤の固まりを流します。
要のブロー
カラーやパーマ、カット後などのシャンプーが終わり、お客さんは「後は乾かして帰るだけ。」という時間です。
乾かし方によってせっかくかけたパーマがくずれたり、綺麗にカットしたアウトラインが崩れたりするので、この時も集中力が必要です。
上位のアシスタントであれば一人で仕上げますが、スタイリストと一緒にブローをすることが多いです。
忙しい日であったり、カラシャンの合格後であれば、ここで先輩に交代し、他のお客さんのカラシャンに入ることが多いです。
ドライの時よりも重要な時間となりますので、まだまだ任せてもらえず、悔しい時間となります。
ゆったりした時間のマッサージ
カラーやパーマの放置時間中に、他のお客さんが少なく、アシスタントの手が空いている時にサービスとして肩のマッサージなどをします。
お客さんと触れられる貴重な時間ですし、将来の顧客につながる可能性もあります。
お話好きなお客さんなのか、静かなほうが好きなお客さんなのか、見極める力が必要です。
また、シャンプーの最後にも軽く頭皮マッサージをする場合もあります。
随時掃き掃除
特にカットが終わった時には毛くずを片付けます。
お客さんが帰ったあとはセット面を綺麗にし、次のお客さんに備えます。
椅子にも毛くずが散っていないか目を光らせます。
細かな毛くずでも踏んでしまえばよく滑ります。
フロアにはヘアアイロンやシザーなど、危険なものがたくさんあるため、スタッフもお客さんも足を滑らせないように足下には十分に気を配ります。
また、よく「仕事を探せ」と言われるので、フロア全体を見て、スタイリストのワゴンに必要なものが不足していないか、逆に不要なものがないか、お客さんが不快感を感じていないか等、至る所に目を配ります。
ほかにも、カラー剤を作る用意をしておく、待ち時間が長いお客さんにお茶を出す等、気を抜くことはできません。
最終受付終了から最後のお客さんが帰るまで
最後のお客さんが来られてシャンプーなどの案内が終わったあとは、後片付けの準備に回ります。
最後のお客さんのメニューにないものや、バックルームの掃除などから始まります。
カラー・パーマ剤の在庫チェック、補充
あまり閉店準備と思われるような作業はできませんが、営業中にできなかった消耗品や備品の補充を行います。
在庫が他の階にあるサロンでは、補充するものの量が多いと重くなるので注意が必要です。
大量のタオルの洗濯
その日使ったタオルを洗濯し、フロアに干して乾かしておきます。
業者からのリースされたタオルはまたお返しするために別にまとめておきます。
営業中にも手が空いた時や何かのついでに洗濯し、乾燥機などで乾かせば乾かして畳み、補充しておきます。
スチーマーの片付け
最後のお客さんがスチーマーを使う施術をしない場合、スチーマーの電源を切り、冷ましておきます。
高圧な機械のため、電源を切るだけにし、タンクなどは触りません。
お客さんの視界に入らないように、排水タンクの水をこっそり捨てます。
イヤーキャップの掃除
カラーリングやパーマ施術の際に耳にはめるイヤーキャップはシャンプーの際に取り外します。
軽く洗って一定の場所に固めて置いておくので、最後にまとめて綺麗に洗い、翌日また使えるようにします。
そのため、カラーリングやパーマのメニューが多い日だと、こちらもあっという間に100個近くになります。
やっと洗い終わったと思ったらカラシャンのお客さんが数人残っていて、また洗わなければいけない、ということも多々あります。
閉店後
お客さんがすべて帰ったあとは、フロアを元通り綺麗にします。
翌日来られるお客さんに気持ちよく入店してもらうためです。
シャンプー台みがき
流した毛くずや飛び散ったカラー剤なども綺麗にします。
水気を放っておくとカビが発生し、臭いの元となるので、付属品は取り外し、乾かしておきます。
意外とシャンプーボウルの外側も汚れているので、せっかく内側を綺麗にしても、最後のチェックで見つけてしまうと、何とも言えない気持ちになります。
ゴミ箱掃除、ゴミ捨て
カットした後の毛くずやカラーリング、パーマの際にでたゴミなどをまとめます。
お昼ごはん等の時にでたゴミもまとめて出すため、野良猫やカラスに狙われないように、朝にゴミ出しをする所もあります。
カルテ、受付表の準備
翌日来られるお客さんのカルテを準備します。
スタイリスト毎にまとめますが、前回担当したスタイリストが違ったりしていると、違うスタイリストの欄に仕舞われていることがあり、「無い!!」と最初は慌ててしまいました。
常連さんの場合、カルテがボロボロになっていたり、記入欄が埋まっていたりするため、カルテを留め直したり新しい用紙を用意します。
Web予約のチェック
Webで受け付けた予約を予約表に書き足します。
翌日、電話予約で二重に受けたりしないためです。
美容師アシスタントもサロンの歯車の回転を支えている
なぜ同じ美容師とは言え、アシスタントの仕事量がこんなにも多いのか。
それは、美容室全体の生産性を上げて利益を向上させるためです。
スタイリストは髪をカットして料金をいただきますよね。
ではアシスタントは、どこで料金をいただくのでしょうか。
それはシャンプーであったり、カラーリングであったり、マッサージをしたりして、お客さんに喜んでもらうことで、次回の予約へと繋げることで発生します。
しかしそれも、シャンプー剤がきちんと補充されていることや、カラー剤の在庫がしっかりあることで、営業中のタイムロスを防ぐことから繋がっているのです。
手が空いていればスタイリストがしてもいいと思うのですが、スタイリストはそうそう手が空くことはありません。
それに、お客さんがその光景を見た時に、違和感を感じてしまう事が多いのです。
威厳を保つためにも、スタイリストはなかなかアシスタントの仕事を手伝えないのです。
また、何よりもスタイリストは自分が担当するお客さんで精一杯となり、サロン全体の様子を見ることは難しいです。
こうしたことから、美容師アシスタントもしっかりサロンの歯車の回転を支えていると言えます。
美容師アシスタントは目配り、気配り、心配りが大切な仕事
私が美容学校に通っていた頃、先生によく言われた言葉です。
アシスタントがスタイリストやサロンにとって無くてはならない存在になるには、いろんな所に気が付くことが大切だと教わりました。
サロンを見渡し、スタイリストが今必要としている事は何か、お客さんが今欲しい言葉は何か、常に気を配る必要があります。
また、冬場は膝掛けが必要でないか、夏場はエアコンが効き過ぎていないか、お客さんの体調を気遣うこともあります。
何よりもアシスタントが一番触れるシャンプーの場面では、お湯の温度や力加減が不快ではないか、毎回確認をします。
何事も、「この次に何が起こるのか、何が必要になるのか」、先を見る力が必要です。
美容師アシスタントはレッスンも仕事の一部
自主練とも言いますが、早く一人前のスタイリストになるために、営業時間外にレッスンの時間を取ります。
それも様々なテストに合格し、サロンワークに参加して、より多くの仕事を取りにいきます。
シャンプーやカラーリング、ブローなどやる事は違っても、姿勢の保ち方、手の動かし方などの基本的な部分は変わりません。
ですので、以前に教わった事が「そういうことだったのか!」と理解できるととても嬉しく、気持ちがすーっと上がっていきます。
また一人でする練習だけでなく、先輩やスタイリストにチェックしてもらう事で、より精度の高い練習になります。
知識の習得も美容師アシスタント必須の仕事
何よりも髪や頭のプロとなるわけですから、基本的な知識は必要です。
例えば、髪の毛の成分はタンパク質で、1本の毛は3層に分かれている事などは理解しておかなければなりません。
他にも、パーマ剤やカラー剤は劇薬ですので、化学反応であることを理解し、頭皮の状態などもチェックする必要も出てきます。
回数を重ねなければわからない事も多いですが、より多くお客さんと触れ、スタイリストに尋ねることでも知識は増やせます。
他にも、お客さんとお話するため、テレビドラマや最新映画、ファッションのことや料理のことなど、様々な「話のネタ」を持っておくと、沢山のお客さんに対応できます。
わからないことでも興味を持つことで、お客さんから情報を得ることも出来ます。
美容師アシスタントの仕事内容で何よりも大切なのは自己管理
接客業、専門職の人は、身体が資本です。
お客さんのため、スタッフのため、働くことで人の笑顔に触れられることはとても嬉しいことです。
その笑顔を自身が作っているとなれば、これ以上の幸せはないでしょう。
しかしそれは自身を犠牲にしてまで行うことでしょうか。
美容師、アシスタントは特に一般の人よりも水、お湯に触れ、手が乾燥しがちです。
その上、薬剤を触れば肌が荒れる可能性も高くなります。
ドライヤーやエアコンで空気が乾燥し、冬になれば咳き込みやすくなります。
中腰になって作業をすることも多く、腰を痛めやすいです。
これらのことから、美容師、アシスタントは身体を壊しやすいです。
しかし朝起きて「出勤できません」となれば、スタッフみんなの反感を買うことにもなりかねません。
スタイリストともなれば、指名してくれたお客さんが待っています。
これらはハンドクリームを塗る、就寝時にはマスクをする、お風呂上がりにストレッチをする等、どこかに必ず対策があります。
アシスタントはサロンワークの要でもあるため、アシスタントにこそ自己管理が求められます。
アシスタント時代に自己管理をしっかりとすることで、スタイリストになっても身体を壊すことが少なくなります。
美容師アシスタントの仕事内容まとめ
様々な事を申し上げましたが、美容師のアシスタント時代は仕事一筋になります。
自分の時間を取ることはなかなかできません。
アシスタント時代は覚える事も動く事も多いですが、それらの積み重ねが様々な所で活きてくるようになります。
また、何も言わないだけで、お客さんもしっかりとその成長を感じてくれています。
- 大きく分けると仕事は2つ
- アシスタントがサロンの要
- フロア中に目を光らせる
- 自身のスキルアップも仕事の内
- 最重要なのは体調管理
世間ではAI技術が進歩していますが、美容師の仕事は無くならないとさえ言われています。
休日でも美容に関する情報収集をしたり、練習会があったり、仕事に関する事も多いでしょう。
反面、オシャレが大好きで最新ファッションやメイクの研究が好きな人には天職とも言えます。
スタイリストになってもその点は変わりませんが、アシスタント時代に基礎が出来ていれば理解も応用も早くなります。
アシスタント時代は辛いことが多いですが、乗り越えることが出来れば後は楽になるものです。
あなたが乗り越えられた方法を、後輩にも伝えて一緒に頑張ってスタイリストを目指しましょう。
なお、美容師アシスタントの「あるある」については、以下の記事をご覧になってください。