治験等の臨床試験の専門職として注目されている治験コーディネーター(CRC:Clinical Research Coordinator)という仕事を聞いたことはありますか?
そこで今回は、治験コーディネーター(CRC)のストレスの原因とその対策について徹底解説します。
この記事をご覧になることで、以下の内容を理解することができます。
- 治験コーディネーターのストレスの原因
- CRCを継続するためのストレス対策
- CRCのストレス対策~他業界・他職種で活躍するために~
- マイナビ看護師 ※病院以外の看護師求人が他サイトより多い。正(准)看護師、治験コーディネーター、保健師、助産師
- レバウェル看護(旧 看護のお仕事) ※2022年オリコン調査で紹介案件の質が第1位。全国対応
治験コーディネーターってストレスは大きい?
CRCに限らず、どんな仕事にもそれぞれの仕事の特性に応じたストレスがあります。
そのため、CRCの仕事は、他の医療職と比べて一概にストレスが大きいとはいえません。
治験は、国から承認されていない『薬の候補』を健康な成人や患者さんに使用し、安全性や有効性(効き目)を確認するために行う臨床試験です。
したがって、通常の治療以上の慎重さと正確さ、確実さが絶対不可欠です。
CRCの仕事を一言でいうと、“国が定めた治験を実施するための厳しいルール「GCP(Good Clinical Practice)」と製薬会社が作成したプロトコール(治験実施計画書)を遵守し、治験を行う医療機関において治験が正確に、スムーズに進行できるように様々なサポートや調整を行うこと”です。
そのため、治験業務全般をコーディネートする役割であるCRCは、常に感度の高いアンテナを張りめぐらせた状態で仕事を行っています。
さらに、CRCは主に治験に参加する患者さん、治験を担当する医師、治験を企画する製薬会社の3者の間に立って調整役を務めますが、関わる相手が多い分、当然、人間関係は複雑になりやすいです。
一方の要望ばかりを尊重すると、他方の意に沿わず、業務がスムーズに進まなくなる場合もあります。
3者間の調整がうまくいかないと、板挟みの状態になってしまいますので、ストレスが生じやすいといえるでしょう。
それでは、CRCにはどのようなストレスが生じやすいのかを具体的にみていきましょう。
仕事に起因するストレス
CRCのストレスのうち、CRCの仕事の内容そのものが原因で生じやすいストレスとして、以下の6つを挙げることができます。
独特のルールと専門用語にあふれている
製薬会社、医療機関、開発業務受託機関(CRO:Contract Research Organization)、SMO及びそれらの関係者は、GCPという法令を遵守して、治験を実施しなければなりません。
GCPは、治験が倫理的及び科学的に実施されること、それによって信頼性の高いデータを収集することを目的とした法令であるため、当然、違反した場合は罰則があります。
そのため、調整役を担うCRCはGCPを正しく理解し、医師等の医療機関のスタッフがGCPを遵守して治験を実施できるようにサポートすることが何よりも強く求められます。
また、治験業界では、SOP(標準業務手順書:Standard Operating Procedures)ダブルブラインド、IRB(治験審査委員会:Institutional Review Board)、SAE(重篤な有害事象:Serious Adverse Event)、CRF(症例報告書:Case Report Form)、EDC(Electronic Data Capturing)等、普段から数多くの専門用語やアルファベットの略語が使用されています。
特にアルファベットの略語は、製薬会社、医療機関、CRO、SMO等とのコミュニケーションやメールにおいて当たり前に使用されるため、略語がわからないと内容を理解することもできません。
マニュアルをそのまま生かせない
同じ治験であっても、マニュアルが一つあれば、どこの医療機関でもそのまま使用して治験を実施できる訳ではありません。
治験ごと、医療機関ごとに、その医療機関の実状に合ったマニュアルを作成したうえで、治験を実施しなければなりません。
製薬会社、医療機関、SMO、CRO等の各機関では、治験業務を誰が実施しても適切に遂行できるように基本的な業務手順の詳細をSOPとして定めています。
ただし、SOPはあくまでも基本的な業務手順を定めたもので、個々の治験に特徴的な手順については、ミスなく治験を進められるようにマニュアルを別途作成する必要があります。
さらに、製薬会社は、治験ごとにプロトコールを作成しています。
CRC、医師を含む医療機関のスタッフは、治験が始まるまでの間にプロトコールの内容を正しく理解し、医療機関でこの治験をどのように進めるのかを頭の中ではっきりとイメージできるくらい、具体的な手順(いつ・どこで・誰が・何を・何のために・どのような方法で行うのか等)を作り上げておくことが重要です。
大変な作業ですが、CRCが中心となり、医療機関のスタッフの方々と綿密な打ち合わせをして準備をしておくことで、スムーズに治験業務を開始することができるのです。
人間関係が複雑 -人たらしの処世術が必要-
CRCはある意味、『人たらし』であることが必要です。
これは、特にSMOのCRCにいえます。
ここでいう『人たらし』とは、CRCに協力しようと思わせたり、CRCと話すと笑顔になる、困ったときはCRCに相談すれば何とかしてくれると思わせるといった、相手を惹きつけ、気になる存在にさせる力になります。
治験は、製薬会社、医療機関の医師や検査部・薬剤部・医事課等のスタッフ、治験に参加してくださる患者さん等、非常に多くの人が関わっています。
先ほども述べましたが、関わる相手が多ければ多いほど、確実に人間関係は複雑化します。
また、医師や医療機関のスタッフにとって、治験業務は通常診療とは別のプラスαの業務になります。
ただ、治験を実施している医療機関が全て協力体制が整っているとはいえないのも事実なんだ。
さらに、CRCは多くの書類や報告書に署名や確認を医師にお願いしなければいけない立場にあります。
医師が署名や確認をしてくれないと、期日までに製薬会社に報告書等を提出できず、締め切りに追われることもあります。
医師じゃないと判断や記載できないものも多く、医師に業務をしてもらって進むものが多いのも現状です。
CRCは多忙な医師の業務の隙間を見逃さないように、医療機関における治験業務が滞りなく進むようにしていかなければなりません。
医師や医療機関のスタッフと普段から良い人間関係が構築できていれば、医師の方からCRCに声をかけてくれたり、スタッフの方が医師の診察の空き時間を教えてくれたりしてくれ、お互いに気持ちよく業務を進めることができます。
ノルマ?の達成が求められる
一般的に医療機関に勤務する看護師等にノルマはありませんが、CRCの仕事には「ノルマ」のようなものが存在します。
営業職のような「ノルマ」ではなく、一人当たりのCRCが担当する治験数、組み入れ患者数、担当患者数といった基準値と目標値が設定されることがあります。
この傾向は、特にSMOのCRCに強いです。
一人のCRCがどのくらいの治験数を担当し、何人の患者さんを治験に組み入れたら会社に利益が出るかを考えて、ノルマ(基準値や目標値)が設定される訳ね。
CRCにとってやり易い治験もあれば、プロトコールの基準に合う患者さんがなかなかおらず、組み入れが難しい治験もあります。
当然ですが、全体のバランス等を勘案して、上司がどのCRCにどの治験を担当させるかを決めるため、やり易い治験ばかりを担当することはできません。
難しい治験を多く担当すれば、必然的にノルマ(基準値や目標値)の達成には大きな困難がつきまといます。
勤務時間外でもいつ連絡が来るかわからない
CRCは自分が担当する治験のプロトコールを読み込んで、その内容を正しく理解し、医療機関の実状に合わせて、具体的な業務手順やマニュアルを作り上げています。
そのため、事前に長期の休暇を取ることが決まっていて、製薬会社の担当者や医師等の医療機関のスタッフ、患者さんに対し、不在期間中、サブ担当のCRCの連絡先を周知している場合を除き、真っ先にメイン担当のCRCに電話がかかってきます。
勤務時間外に電話がかかってきても無視すればいいと思うかもしれませんが、治験の場合、未承認の医薬品を使用するということもあり、副作用や有害事象がいつ起こるかわかりません。
特にSAE(重篤な有害事象)が発生した場合には、プロトコールに従い、決められた期間内の報告が義務づけられています。
プロトコール違反とならないよう、CRCはその期間内に医師がSAE報告書を作成し、提出できるようにサポートをしなければなりません。
「チーム」よりも「個」に仕事が集中しやすい
先程も述べましたが、CRCは治験ごとにメイン担当とサブ担当がいて、複数のCRCがチームとして仕事をしています。
しかし、どうしてもメイン担当のCRCに仕事も責任も集中しやすくなります。
サブ担当は他の治験のメイン担当を兼ねているため、どうしても自分がメインで担当する治験を中心に業務を行っています。
そのため、実質、メイン担当のCRCのみで業務を行わざるを得ない状況になりやすいのです。
医療機関に勤務する看護師や薬剤師等の場合、上司が前月に決めた勤務表に従って働きます。
もちろん休暇の希望を出すことはできますが、他のメンバーの休暇の兼ね合い等もあるため、自分の都合だけで強引に休暇や早退の希望を出せる訳ではありません。
CRCもいつでも休暇や早退をできる訳ではありませんが、他のメンバーの勤務状況をあまり気にする必要はありません。
休暇を取りたい日や早退したい日には、患者さんの来院対応、医師や製薬会社の担当者との面談等、仕事の予定を入れないように自分で調整することができます。
患者さんや医師、製薬会社の担当者と対応が必要な業務予定さえ入っていなければ、サブ担当のCRCに業務をお願いする必要もありませんので、休暇を取ることや早退することについて、上司や同僚からネチネチ言われることもなく、ある意味、自由度が高いといえます。
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環境に起因するストレス
CRCのストレスのうち、CRCが働く環境が原因で生じやすいストレスとして、以下の5つを挙げることができます。
治験業界の様々な変化への素早い適応
SMOの合併・統合への適応
1997年のGCP制定以降、治験の活性化を目指し、日本ではSMOが急激に増加しました。
SMOの業界団体である日本SMO 協会の加盟企業数は、2008年は56社でしたが、この10数年の間にSMOの合併や統合が進み、2020年4月には半数以下の26社にまで減少しました。
(参考:日本SMO協会データ 会員企業一覧)
笑い話じゃないですが、元の職場に不満があり他のSMOへ転職したCRCの中には、転職先のSMOが以前勤務していたSMOに吸収されて、結果的に元の職場に戻ってしまった・・・という人もいます。
他のSMOが着手していない(着手できない)新たな事業を展開したり、他には負けないノウハウを持つことが強みになるね。
新薬開発のターゲット疾患の移行に伴う適応
さらに、SMOが乱立していた頃は、生活習慣病治療薬の開発が数多く行われていましたが、現在、新薬開発の主体は癌や中枢神経系疾患等、難易度の高い疾患に移行し、プロトコールも複雑化しています。
そのため、治験を行う医療機関も、クリニック等の小規模医療機関から比較的大きな規模の医療機関へとシフトしています。
CRCには次々に変化する新しい概念や技術に素早く適応できるだけでなく、難易度の高い疾患やプロトコールを理解し治験業務の支援をできること、さらに、規模の大きな医療機関で煩雑なコーディネートも実践できることが求められます。
年齢の高いCRCの場合、変化への適応という点にストレスを感じ易いかもしれません。
CRCの人材流動が激しい
特にSMOのCRCにいえることですが、実務経験とキャリアが豊富なCRCにはSMOからSMOへの転職を繰り返す人が多く、人材の流動性が高いです。
キャリアアップや働きやすい環境を求めて
中小規模SMOの場合、人材が不足していることもあり、前歴をアピールすることで、年収や役職等、条件面の交渉がしやすくなることも影響しています。
年収や役職等の条件面のアップに限らず、担当する医療機関が遠過ぎて移動の身体的負担が大きい、転勤したくないといった働きやすい環境の追求も他のSMOへ転職する主な理由です。
SMOと一言でいっても、全国展開している大手SMOもあれば、特定の地域で地域密着型で事業展開を図る中小規模SMO、あるいは特定医療機関との連携で事業展開を図る小規模SMO等、様々です。
医薬品や医療機器等、幅広い領域を支援しているSMOもあれば、精神科等の特定領域に特化して支援をしているSMOもあり、何を基準にするかによって、自分の希望に合うSMOも変わってきます。
通勤の過度な負担、転勤を避けるために
SMOのCRCは、各SMOが契約を締結している医療機関で治験の支援を行います。
担当する医療機関は会社が決めるため、会社のオフィスや自宅から比較的近い医療機関を担当できることもあれば、移動に2時間かかる医療機関を担当することもあります。
遠方の医療機関を担当すると、重い荷物を抱えて頻繁に移動することになります。
医療機関を訪問する頻度や業務を行う期間によっては、身体的にも精神的にもかなり大きな負担となり、特に子育て中のCRCにとってはプライベートとの両立が難しくなることもあります。
さらに、全国展開している大手SMOの場合、キャリア構築や人員調整のため、どうしても他の都道府県への転勤を避けては通れません。
特に新卒で入社した人や独身者、管理職の場合は、転勤を依頼される可能性が高いです。
子育てや介護等、転勤できない明確な理由がある場合は心配ありませんが、そうでない場合は、転勤の可能性があることを心得ておく必要があります。
身分が不安定 -国家資格化されていない-
医療機関が治験をスムーズに遂行し、質の高い臨床試験データを収集するためには、CRCのサポートは絶対的に必要不可欠です。
さらに、グローバル試験の増加やプロトコールの複雑化に伴い、今やCRCのサポートなしで治験を実施することは不可能であり、CRCの需要は年々高くなっています。
CRCの必要性は十分に認識されていますが、残念ながらCRCは国家資格化されていません。
民間資格として、日本臨床薬理学会や日本SMO協会等、治験に関する学会や業界団体が実施している「認定CRC制度」はあります。
ただし、これはCRCになるための資格ではなく、認定者に対して特別な権限を付与する制度でもないため、CRCとして身分の安定に直結するものではありません。
あくまでもCRCとして経験を積んでいる人に対し、よりハイレベルなCRCであることを認定する制度になります。
CRCとしての「質」と「キャリア」を客観的に証明するという点では、認定資格取得の意味は非常に大きいといえます。
専門職としてのキャリアパスや教育研修体制が不十分
ほとんどのCRCは、看護師、薬剤師、臨床検査技師等の臨床経験を積んだ後、CRCとして仕事をしながら、臨床試験の専門職としての知識や技術を習得しています。
そのため、他の医療専門職と異なり、専門職としてのキャリアパスや教育研修体制は十分には整備されていません。
近年の治験を含む臨床試験のグローバル化により、臨床試験の実施環境も日々急速に変化しています。
これに伴い、臨床試験の専門職であるCRCに求められる能力も高度化し、CRCとして専門性の高い人材育成が強く求められるようになりました。
一方でCRCには、キャリア発達の実態に基づく統一基準がないこと、医療資格保有の有無といった外的キャリアの影響があること、さらに医療機関の職員として雇用されているCRC(院内CRC)やSMOに雇用されているCRC等、所属によって働き方が異なるといった複雑な背景があることで、専門職としての教育研修体制を確立しにくい実状がありました。
現在は教育研修内容の標準化が進んでいますが、医療系の専門職という観点でみると、まだまだ十分とはいえません。
所属(院内CRC、SMOのCRC)の違いに伴うもの
医療機関の職員として雇用されているCRCのことを院内CRCといいます。
院内CRCとSMOのCRCとの大きな違いは、「雇用形態」と「CRCとしての専門性」です。
雇用形態や労働環境の影響
医療機関における治験の受託件数は、製薬会社の新薬開発状況、医療機関の方針や実施体制の影響を大きく受けます。
そのため、雇用形態では、SMOのCRCは正職員での雇用が多いことに対し、院内CRCは非常勤や契約職員での雇用が多いです。
院内CRCの特徴として、看護師、臨床検査技師、薬剤師として働いている職員が院内の人事異動でCRCの仕事に配属されるケースが多く、場合によっては、看護師、臨床検査技師、薬剤師の仕事とCRCの仕事を兼任しているケースもあります。
したがって、人事異動次第では、CRCを続けたくても続けられなくなる可能性が高いです。
一方、SMOのCRCの特徴として、雇用形態は恵まれていますが、M&Aによる影響を大きく受ける可能性があります。
特に吸収される方のSMOに所属していると、社内規則や職場環境等が大きく変化してしまいます。
また、院内CRCは医療機関の職員ですが、SMOのCRCは医療機関からSMOに委託された治験業務をサポートする立場であり、医療機関の職員ではありません。
そのため、医療機関の職員からは「外部の人」として見られるため、そのことを常に意識しながらCRCの仕事をしなければいけません。
しかも、治験を行っている医療機関は、必ずしも治験に対するモチベーションが高い訳ではありません。
通常の診療の流れや治験業務の流れも医療機関ごとに異なるため、担当する医療機関の実状に合わせて臨機応変に対応しなければいけません。
専門性を高める環境
専門性について、SMOのCRCは幅広い疾患領域の治験を経験できる一方、複数の医療機関をかけ持ちして担当することが多いため、自分が得意とする疾患領域に限定し、専門性を高めていくことは難しいです。
一方、院内CRCは、自分が勤務する医療機関が受託する治験のみに携わること、疾患領域ごとに担当分けをしていることも多いことから、CRCとして専門性を高めやすい環境にあるといえます。
治験コーディネーターのストレス対策
フォローしてもらえる業務体制、協力体制を構築する
仕事に起因するストレスのうち、ノルマの達成、勤務時間外の連絡、「個」に仕事が集中しやすいことについては、どの職種にも共通しますが、CRC間で十分なフォロー体制、協力体制を構築することで、かなりのストレスを軽減することができます。
院内CRCの場合は、常に同じ場でチームメンバーと仕事をしているため、フォロー体制を構築しやすい環境にあります。
一方、SMOのCRCの場合は、同じチームのメンバーであっても、別々の医療機関で仕事をしていたり、時々しか同じ医療機関で一緒に仕事をしないこともあるため、チームメンバーであってもお互いの状況が見え難い環境の中で仕事をしています。
そのため、すぐにフォローできなかったり、誰か一人に業務が集中しやすくなる傾向があります。
CRC一人ひとりの業務状況を一目で把握でき、業務が集中している時にはすぐにフォローできるよう、業務の見える化を図ること及び困った時にいつでも助けてと言える関係を築いておきましょう。
CRCを継続するために転職する
CRCの仕事が大好きで、今後もCRCの仕事を継続したいと思っていても、現状の職場では自分の望む働き方ができない場合、CRCの仕事を継続するために転職することも一つの方法です。
転職の方向性として、以下の3つを挙げることができます。
医療行為に未練があるなら院内CRCへ
SMOのCRCは、医療機関の職員ではないため、例え看護師や臨床検査技師等の医療資格を持っていても、医療行為(採血等)分は一切できないことになっています。
CRCの仕事も継続したいし医療行為も行いたいという場合は、院内CRCへ転職したらどうでしょうか。 院内CRCは医療機関の職員ですので、医療資格を持っていれば、医療行為を行うことが可能です。
ただし、稀ですが、院内CRCには医療行為を禁止している場合もあるため、転職を希望する医療機関の採用条件を事前にしっかりと確認しておきましょう。
職場環境や待遇に改善の見込みがないなら他の医療機関やSMOへ
CRCの仕事は継続したいが、現在の職場(医療機関、SMO)の労働条件や待遇、人間関係のストレスが大きく、上司に相談しても改善の見込みがない場合は、心と身体の健康を害する前に、他の医療機関やSMOに転職することをお勧めします。
あなたが最も重要視すること(給料、時間、キャリア等)が何なのかを明確にしたうえで、希望に合う職場の求人募集が出ていないかをリサーチし、十分に吟味して、次の職場を選択しましょう。
ただし、人間関係については、働いてみないと良し悪しはわかりません。
同じ失敗を繰り返さないように、自分自身も変わる努力は必要です。
スキルや専門性に自信があればフリーランスCRCの道も
日本と異なり、フリーランスが遥かに進んでいる欧米では、雇われる働き方でも雇われない働き方でも生きていける人たち(つまりスキルや専門性に自信のある人たち)は、雇われない自由な働き方を選択しています。
日本でもまだ多くはないですが、治験や臨床研究のプロジェクト毎(プロトコール毎)に契約をしてCRCの仕事をしている「フリーランスCRC」が存在しています。
フリーランスで働くメリット
- 自分が得意とする専門領域を深化させることができる
- 本来のCRC業務に限定せず、仕事の幅を広げることができる
(例えば、プロトコール作成、統計解析、論文作成等) - 自分のライフスタイルに合わせた働き方ができる
フリーランスで働くデメリット
- プロジェクトが終了する都度、次の仕事を探す必要がある
- CRC不在時に治験担当医師が被験者対応をできるようにしておく必要がある
- 教育研修の機会が得られにくい
- 収入が一定ではない
デメリットよりもメリットの方が大きな魅力と感じられるのであれば、CRCとしてのスキルや専門性に十分な自信がある場合に限り、フリーランスCRCとして活躍する道もあります!
日本ではまだ一般的ではないため、フリーランスCRCが活躍するための新たな道筋をあなた自身が作り上げていくこともできます!
CRCを辞めて他業界、他職種へ転職する
CRCの仕事に限界を感じ、辞めることを決断した場合は、他業界・他職種へ転職するしかありません。
医療資格を生かした職場への転職
看護師、臨床検査技師、薬剤師等の医療資格を有している場合、一番スムーズなのは、その専門知識を生かせる職場(医療機関、調剤薬局等)に転職するという選択肢です。
CRCの仕事は24時間拘束されている感が強いですが、国家資格を生かした医療職の場合、仕事とプライベートとの線引きは約束されます。
CRCの経験を生かしたジョブチェンジ
CRCの経験を生かしたジョブチェンジとして、製薬会社やCROのCRA(臨床開発モニター:Clinical Research Associate)やDM(データマネジメント:Data Management)等の職種、製薬会社のMR(医薬情報担当者:Medical Representative)やMSL(メディカル・ サイエンス・リエゾン:Medical Science Liaison)等への転職があります。
CRCは治験を実施する医療機関側をサポートする立場ですが、CRAやDMは治験を依頼する製薬会社側で治験の準備や管理をする立場になります。
全く逆の立場にはなりますが、医療機関における治験の実務を知り、患者さんの思いや様子を目の当たりにしているCRCは、そのことも踏まえて治験の準備や管理の業務を行うことができるため、非常に大きな強みになります。
製薬会社のMRやMSLの仕事は営業色の強い職種です。
CRCは人と人を繋げて調整する役割と書類作成等の事務作業が中心ですが、MRは事務作業よりも医師との関係づくり等、対人業務が中心となります。
MSLは医療業界で多方面に影響力を持つ医師、 すなわちKOL(キーオピニオンリーダー)のマネジメントや臨床研究支援を主な業務とする新しい職種です。
CRCの仕事で培った薬学の知識を生かし、もっと人と関わりたいという思いが強い場合は、医師等と深くコミュニケーションをとることのできるMRやMSL等に転職するという選択肢もあります。
その他、CRCは人間関係をコーディネートすることに大変長けていますので、新たな知識を習得することに抵抗がなければ、特定の分野のコーディネート職への可能性もあるといえます。
- マイナビ看護師 ※病院以外の看護師求人が他サイトより多い。正(准)看護師、治験コーディネーター、保健師、助産師
- レバウェル看護(旧 看護のお仕事) ※2022年オリコン調査で紹介案件の質が第1位。全国対応
治験コーディネーターのストレスの原因と対策まとめ
今回は、CRCの仕事のストレスの内容とその対策についてご紹介しました。
- CRCに生じやすいストレス
- 仕事そのものに起因するもの、働く環境に起因するものがある
- 院内CRCかSMOのCRCかによってもストレスの内容は変わる
- CRCのストレス対策~CRCを継続するために~
- フォローしてもらえる業務体制・協力体制を構築
- 院内CRC⇔SMOのCRC、院内CRC⇒院内CRC、SMOのCRC⇒SMOのCRCへの転職
- フリーランスCRCへ転職
- CRCのストレス対策~他業界・他職種で活躍するために
- CRCの経験を生かし、医療職やCRA、MR、MSL等への転職
CRCの仕事はやはりストレスはありますが、決して辛いことばかりではありません。
例えば、以下のように、日々嬉しいことや大きな遣り甲斐を感じることがたくさんあります!
- 自分が担当した治験の治験薬が医薬品として世の中に誕生したとき
- 患者さんから「治験に参加して良かった」「あなたに担当してもらえて良かった」という言葉をいただいたとき
CRCは、新薬開発の重要な業務の一翼を担う臨床試験の専門職です。
専門職としての歴史はまだ浅いですが、今後、専門職としての地位をさらに確立し、活動の幅も拡大していくことが期待されています。
ぜひ一緒にCRCの新たな歴史を作り上げていきませんか?