脱サラして農業で起業。
十数年経ちました。
私が起業した頃と比べても、農業を取り巻く環境はどんどん悪くなってきています。
今回は、農業で起業した私が、自身の失敗経験を踏まえて、農業での起業で失敗しない方法を解説します。
勝ち組の共通点を学んであなたの農業起業に生かしてくださいね。
農業は起業して失敗することが多い厳しい業界
農業者1人当たりの実質賃金は、最低賃金のはるか下です。
私が就農した十数年前、この地方の農家の一人当たりの実質賃金は時給220円といわれていました。
ここ数年、最低賃金の伸び率は政府決定によって、大きく跳ね上がりました。
650円ほどだった最低賃金は時給762円になりました。
地方によって、農業者の実質賃金と最低賃金の金額は多少違うとは思いますが、農業者の時給が、最低賃金のはるか下であることに違いはありません。
実態を伴わない最低賃金の上昇は、農業での起業をさらに難しくしています。
三ちゃん農業はもう過去のこと
では、なぜそんな低賃金なのに生活し、再生産していけたのか。
それは家族労働に依存していたからです。
昔、3ちゃん農業といわれた時代がありましたが、爺さん・ばあさん、父ちゃん・母ちゃんという家族労働と長時間労働に支えられていた時代です。
でも、いまやこれもお終いです。
高齢化とともに、爺さん、ばあさんが欠け始めました。
私の知り合いの50代の農家では、爺さん、ばあさんの労働力の引退とともに、経営が悪化、子供たちの教育費等を稼ぐために、嫁さんが他に働きに出ざる負えない状態が生じています。
あなたが、いま農業で起業して労働者を雇用した場合、農業の生み出す価値と最低賃金の政策的な高騰による差は、さらに経営を圧迫する要因です。
なぜなら生産物が市場で高騰していません。
農業で勝算なく脱サラ起業するのは論外です!
現在の農業者のかなりの部分を占めるのは兼業農家です。
その兼業農家も子供たちが後を継がず、耕作者自身も後を継がせたいとは思っていない人がたくさんいます。
農地と補助金があるから仕方なくやっている人が多いのです。
兼業農家のなかには、土日百姓のために機械を借金してまで購入している農家もあります。
これが高齢者であれば、年金の一部を田畑に突っ込んでいる状態です。
ですが、それも今の世代で終わりでしょう。もはや年金があてにできない時代です。
こんな状況で、勝算もなく脱サラして起業することは、あなたの大切なお金と時間をドブに捨てるようなものです。無謀です。
農業で起業して失敗しない方法はあるのか?
こんな農業でも勝ち組はいます。
勝ち組といっても莫大な利益を上げているのはほんの一部で、大半は、専業として生計を成り立たせて、なんとか生産を拡大させている人達です。
では、実際、農村でどんな人たちが生産を拡大できているかを見ていきます。
自営農業就農者での勝ち組
すでに就農している専業農家の人たちですが、この人たちの大半は、親子何代にもわたる農民であることが多いです。
この人たちの成功は1代でなした成功ではありません。
3代ぐらい前からの結果として成功している例が多いです。
この人たちの特徴は3代ぐらい前からその地域では、栽培研究や市場開拓に熱心であった農家です。
さらに注目するべきことは、研究熱心なことに加えて、家族労働とその家族の長時間労働によって得られた貴重なお金を極力外に出さないで、外部に出すのは補助的なアルバイトにとどめていることです。
それから、補助金等の導入の仕方がうまいことがあげられます。
つまり資金調達力があるということです。
もう一つ、一部の専業農家にみられるのが、地の利をうまく利用している例です。
それは都市近郊の専業農家で、所有地の一部を別の資産形成にうまく活用しながら、本業をしっかり家族経営で存続させている例です。
新規就農者の勝ち組は少ない
私も新規参入者で、いわゆる起業をしたわけですが、私の周辺も含めて、このクラスの勝ち組は知りません。
新規参入者の勝ち組を見るのは、本やテレビで知るだけです。
また生き残れるのはほんのわずかだということを農協関係者から聞いたことがありますが、実態はわかりません。
テレビなどで見る勝ち組は、マスコミ映えする勝ち組なのでしょうが、今まで見てきた農業の実態から言えば、極めて少数の成功者であることに間違いはありません。
農業の起業で失敗しないために必要なもの【勝ち組の共通点】
私の周りの成功者と本やテレビで見る勝ち組とは、1代で起業して成し遂げたということと、3代かけて成し遂げたということを別にするといくつかの共通点がみられます。
この共通点が、あなたの起業に参考になるものです。
自分に初期投資
あなたが農業について何も知らなければ、あなたにとって最も必要な初期投資は、弟子入りすることです。農業で一番儲けてる人のところに修業に行き、儲かるその作物について、栽培法から販売方法、その生活や考えについて、すべてを学ばせてもらうのです。
一番儲けている人は、研究熱心・資金調達力・利に目聡いを、すべて持っている人です。そしてそれをそっくり真似るのが、成功する一番の近道です。
土地・施設の確保
土地の確保も初期投資の一部ではありますが、お金のことと違って人間が直接絡むことによる特殊事情があります。
もし、あなたが、露地関係の生産物をしようと思っていらっしゃるなら、特に注意してください。
農村も普通の人間社会です。
自分の利で動きます。
知り合いでも注意してもらいたいことですが、農家が他人に貸す田畑は利便性の悪い土地からしか貸しません。
その土地についての知識がなければ、簡単に騙されます。
地域の人に聞き、農業委員会や農協等でしっかり下調べをすべきです。
園芸施設についても十分気を付けてください。
研修を受けた後に貸してくれた施設が実は法外な賃借料だったという例もあります。
労働力の確保
農業の現場では、生産物によっては、機械化が進んでいるものもありますが、まだまだ人間の手を必要としています。
もし、あなたが、1人で生産までと考えておられるなら、それはあまりにも無謀です。
雑事に追われたが最後、田畑に投入できる労働力は、1人以下です。
販売まで考えたら、とても生きていけません。
初期投資の段階からある程度の労賃の見込み額をしっかり立ててください。
最適な初期投資
このように初期投資・土地の確保・労働力の確保と考えてくると見えるのは、農業の初期投資はかなり費用が掛かるということです。
さらに販売活動の経費と生活資金が入ってきますから、初期投資の段階から生産・販売の技術力と資金力が備わっていないと、短期でいい結果を生み出せません。
短期でうまく起業できなければ、じり貧状態に陥ってしまいます。
最初から契約栽培で売買できればいいでしょうが、市場で売買される割合が高ければ、天候や消費者動向による暴落のリスクにあなたの生産物はさらされ、場合によっては大打撃を受けます。
一刻も早く、生産を拡大して売り上げを上げられる生産規模に到達しないといけません。
そこまで走れる費用が、最適な初期投資額といえます。
実体験的には、数百万円などはあっという間になくなります。作物によりますが、1~5千万円ぐらいは必要なのではないでしょうか。
農業で失敗しない起業の道はあるのか
テレビや本などで成功してる例をみると、大きく2つあるようです。
ひとつは、初期投資から、思い切って潤沢な資金投入をすることです。
生産技術と生産施設、そして販路をセットで購入してしまうやり方です。
トマトなどの植物工場的な生産です。
もう一つは、生産原価は非常に安いのですが、高付加価値で売れる作物を選んで作ることです。
この場合、独創的な発想力が必要で、販路は高級食材や高級店などで扱う品物となり、販路開拓は非常に苦労されると思います。
本やテレビでみる成功者はほんのわずかな人です。
年金も充てにならなくなった今、農業をしたことのないあなたが、脱サラして農業で起業するのは極めて困難です。
しかし今までお話ししたような投資がうまくいけば、ほんの一握りの成功者になれないわけではありません。
あとはあなたの覚悟と経営センスと運があるかどうかでしょう。
農業で起業しようとするあなたへ
農業で起業しようとするあなたに、私の経験の中で知り、考えたことをまとめてお伝えします。
- 農業者の実質賃金は最低賃金のはるか下
- 家庭内労働力はもう時代遅れ
- 年金があてにならない時代!
- でも、農業の勝ち組はいます!
- 研究熱心+家族労働+資金調達力で勝ち組に
- 新規就農者の勝ち組は極めてまれです
- 一番儲けている人に弟子入りして学ぶこと
- 農地を借りるときはしっかり下調べすること
- 初期投資にはお金がかかる
- 投資・覚悟・経営センスそして運があれば、ほんの一握りの成功者になれる
あなたが農業で起業されるのか、再考して別の起業を目指されるのか、いづれにしても頑張ってお幸せになられることを祈念しております。