私は住居の2階にアトリエ兼事務所として一部屋増築しました。
画家のアトリエは住居として必要な居心地のよさとか癒しを求めるだけではいけません。
キャンバスと向き合い一つの作品を生み出す事のみに執着した緊張感を味わう場所です。
今回は私のアトリエや友人の画家のアトリエを例に、画家のアトリエに欠かせない3要素について解説します。
これが無いと画家として稼いでいけるとは思いがたいのです。
それほど大切な画家のアトリエについて、さっそく見ていきましょう。
画家のアトリエに必要な3要素
画家のアトリエは今昔問わず必要不可欠な条件があります。
私がこれまで見てきたアトリエを思い浮かべながらアトリエに必要な要素を考えてみました。
一つは採光であります。
その為に光の射し込む大きな窓が幾つか必要です。
一つはアトリエの広さです。
その為には大きな部屋が必要なのですが財政力のない若い画家にはなかなか広い部屋という訳にはいきません。
一つはアトリエを取り巻く環境でこれが一番大事です。
作品制作の意欲を掻き立て、抵抗を感じる事が無いような場所であることが大事です。
画家のアトリエは要するに見かけではなく、いかに画家が自然に作品制作ができて動きも気持ちも何不自由なく遮るものがないことが重要です。
もちろん、アトリエの見かけも、あまりにも汚れていたり壊れていたりではやる気もなくなりますので綺麗に越したことはありません。
ただ、お城のように綺麗で中の物も汚さないように気を遣うようでは逆効果です。
画家の服装も汚れてもいい、なりふり構わぬ服装の方がいい訳ですから、それに準じるという事です。
もちろん画家によっては一人一人多少違うでしょうから異論のある画家もおられると思います。
次項からプロの画家であります私、外山昇が考えるアトリエの在り方について、3つの要素をそれぞれ解説していきます。
画家のアトリエに必要な採光
画家のアトリエには光の射し込む大きな窓が必要です。
作品制作は自然な光を利用して、よく見て確認しながら描いていく事が大切だからです。
油絵であれ水彩画であれペン画であれ射し込んでくる光によって見え方がずいぶん変わってきます。
ですから部屋に差し込む光は大事であり意識しなくてはいけないのです。
展覧会場や個展会場などでも絵を飾る場所によって、あるいはスポットライトの当たり方によって見え方がずいぶんと変わってきます。
展覧会では主要作品は場所もさることながらスポットライトなどによる光の当たり方も考慮されています。
グループ展では先生格の作者の作品がいい場所いい照明の場所にあるものです。
個展会場では作者のお気に入りの作品ほどいい照明の場所を選んでいます。
作品の見え方は見る角度によっても違ってきますが、それについては次の項目の中で少し触れさせて頂きます。
画家のアトリエに必要な広さ
画家のアトリエは広ければ広いほど良いでしょう。
名のある画家は弟子たちとともに制作する事がよくあります。
弟子が多くいればいるほど広いアトリエでなくては狭苦しくなって集中できません。
一人一人の制作場所、材料や道具の置き場所、過去の作品も含めた作品置場が必要になるのです。
大きな作品を制作する事もあり、広さだけでなく、天井の高さが必要となる場合も出てきます。
大きな作品であればあるほど遠くに離れた位置から制作中の作品を確認しなければなりません。
遠くから作品を見た方が画面全体の構図やバランスやコントラストなどの出来具合が解り易いのです。
作品は光により見え方が変わってくることは前の項でお話しましたが、見る角度によっても変わってきます。
遠くに離れたり見る角度を変えたりする為にもアトリエの奥行きなり広さが必要になってくるのです。
とはいえ駆け出しの若い画家ならずとも売れてない画家には広いアトリエを確保するのは経済的にも至難の業です。
私のアトリエはもう少し広さが欲しいのですが悲しいかな、お金がありません。
ツイッター等見ていると羨ましいアトリエがいっぱいありました。
鷺宮の三岸家アトリエ(山脇巌、1934)。画家の三岸好太郎・節子夫妻のアトリエ兼居宅。先日の京近美バウハウス展で知った山脇巌、しかも春に訪れた札幌・北菓楼では三岸好太郎の絵を見たじゃないか、といそいそ行った。バウハウスの流れをくむ木造建築は世界的にも貴重らしい。 pic.twitter.com/m9s5p8pA88
— ムチコ (@muchipuri) November 8, 2018
画家のアトリエに必要な環境
貴方は自分のアトリエが広くて天井も高く、大きな窓も幾つかあり、適度な光も差し込んで、設備も良く、静かな場所であればそれでいいですか?
もう一つ忘れてはいけない大事なことがあります。
アトリエをとりまくヒューマニズムな環境です。
周囲に騒音等がない静かな環境
せっかく最適な素晴らしいアトリエがあっても電車の線路附近であったり、工場近くであったり、道路工事が多かったりして騒音があれば台無しです。
画家ならずとも芸術家は感情や気持ちをぶつける世界に入り込むので癒しの場所でありかつ集中できる場所でなくてはいけません。
山の中で緑に囲まれた静かな森の中にあり、周囲から小鳥の声が聞こえてくる。
映画やドラマにでも出てきそうな理想的なアトリエですが私にはもてません。
他の場所にアトリエとして構える気はないし、そんな財政力もない人は、静かな時間帯に制作するとか工夫が必要です。
中には騒がしい方が制作が進む画家もおられるかもですネ。
家族や近隣に迷惑をかけない環境
家族と同居の建物である場合、アトリエ内でのお弟子さんとの会話、騒音等による家族や近隣に迷惑を掛けない部屋である事。
お弟子さん達が静かな人ばかりだとよいのですが、中にはよく笑ったり大きな声を出す人がいたりします。
騒音といっても画家のアトリエの場合、せいぜい木枠を組み立ててキャンバスを張る時ぐらいのものです。
しかし画家でも立体的な造形をつくったりしますので画家のアトリエには騒音が出ないとは言い切れません。
広い土地をもって離れにアトリエを置くのが無理な画家の方が多いと思いますので、もしあなたがそうなら静かにするよう気を配りましょうネ。
誰でも気兼ねなくアトリエに入れる環境
騒音もなく静かなアトリエであっても、教室を兼ねたアトリエならとくに、お弟子さん達やお客様が入りにくいアトリエであってはいけません。
アトリエまで行くのに画家の家族と常に顔を合わせたり、アトリエの中がお城のように綺麗すぎるとかえって入りにくいものです。
画家の服装が作業向きであるのと合わせて、アトリエも気兼ねなく遠慮なく入れる部屋でなくてはいけません。
気の小さいお弟子さんだと制作にも萎縮したりして、作品制作の覇気が欠けてしまいます。
家族を遠のけたり、わざとアトリエ内を汚す必要はありませんが、癒しのあるアトリエの雰囲気づくりをする事が大事です。
画家のアトリエに必要な3要素まとめ
今回は画家のアトリエに必要な要素について述べてきました。
その画家にあったアトリというのは画家の環境や性格によって違います。
貴方にあったアトリエ構築にもこだわって制作に励みましょう。
- 画家のアトリエは採光、広さ、アトリエを取り巻く環境が必要
- 画家のアトリエは自然な光の利用が作品制作において大切
- 画家のアトリエはお弟子さんを入れたり大きな作品を制作したり、作品を離れて角度を変えて見たりするのに広い面積が必要
- 画家のアトリエは静かな環境、音や声が届きにくい環境、気兼ねのない癒しのある空間であることが大事
同じ場所に集まって制作をする集団をさしてもアトリエと呼んだりもします。
私は自分のアトリエを開放して絵画教室を開催しています。
私のアトリエの塾生達に「画道集団」という称号を付けてワイワイと人生を語っています。
自分の制作現場を開放する事で、アトリエはどうあるべきを教えてもらいました。
やはり自分にとっても塾生にとっても癒しの場であることが一番!
ですから理想のアトリエを手に入れるためにも制作に励んで先立つものを獲得しないとですね。
なお、水彩画については、以下の講座をご参考にどうぞ。
旅先で出会った風景を写真でなく、絵で残せたら素敵ですよね。
【水彩画3弾セット】プロ直伝!いきなり上手に描ける水彩画講座
画家が収入を得る方法について、以下の記事で詳しく解説しています。
どうぞご参考になさってください。