調理師というと、一見その華やかさに目がいきがちですが、実際にはきついことなどもあるのでしょうか。
また、調理師の仕事できついこととは一体何なのでしょうか。
今回の記事では、私が調理師として働いた経験をもとに、調理師の仕事できついことを深く掘り下げ、それらのきついこととどうやって向き合っていけばよいのかの対処法をご教授します。
これから飲食業に入ろうか悩んでいる方や今現在、調理師として奮闘中のあなたに参考にしていただければと思います。
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調理師の仕事はなぜきついのか?
調理師の仕事はきついとよく言われますが、本当なのでしょうか?
経験者の立場から言わせていただければ、これは本当のことです。
昔から調理師の仕事は3Kと言われていました。
3Kとは、「きつい」「汚い」「危険」の3つの言葉の頭文字を取った言葉で、いやな仕事の代名詞として使われました。
- 基本的に調理師の仕事は、朝から晩までずっと立ちっぱなしで「きつい」
- 残飯の処理、皿洗いなどの片づけが「汚い」
- 刃物を使うのでケガも多いし、火も使うのでやけども多い「危険」
3Kのうち2つの「汚い」「危険」は調理するにあたり、ある程度仕方がない部分があるかと思うのでまだ理解できるものの、「きつい」に関して言えば耐え難いという人も多いのではないでしょうか。
では、なぜ調理師の仕事はきついのでしょうか。
一般的にどこの職場でも調理師は不足していると言われています。
調理業界全体が慢性的な人手不足に陥っているのです。
ですから、その人手不足に比例して、どこの職場においても調理師一人当たりの仕事の負担が増え、それが「きつい」と言わせる直接的な原因となっているのです。
なお、調理師の具体的な仕事については以下の記事をご覧ください。
調理師の仕事がきつい理由6つ
では、調理師の仕事の何がそんなにきついのでしょうか。
ここでは、調理師の仕事をしていて実際に私がきついと感じたことを具体的に挙げていきたいと思います。
長時間労働
まず筆頭に挙げられるのが長時間労働です。
とにかく一日の労働時間が長い。
朝は8:30には出勤して、夜の23時ごろまで働いていましたから毎日12時間~13時間ぐらいは働いていました。
帰りはいつも遅く、ご飯を食べて寝るだけの生活をしていました。
自由にできる時間はほとんどありませんでした。
仕事終わりにリフレッシュすることが出来ず、正直次の日もあまり精神的によい状態であったとは言い難い状態でした。
ほとんどの職場の方が私と同じかそれ以上の労働時間なのではないでしょうか。
なかには、退勤時刻が終電ギリギリだとか、時計が次の日を回っているなんて言う人もいるのではないでしょうか。
そのくらい、長時間労働なのが調理師の仕事の現状なのです。
休日が少ない
長時間労働に並んで調理師の仕事がきつい理由に挙げられる上位トップ3には入るのが休日の少なさです。
ほとんどの人が週6日労働なのではないでしょうか。
私の場合、個人経営のお店に就職したので、自分の休日とお店の定休日が一緒でした。
つまり、お店が開店する限りは休めないということです。
しかも私のお店は月曜日が定休日でした。
平日です。
唯一の休みが土曜日でも日曜日でもなければ平日。
これって、思った以上にきついです。
まず、みんなと休みが合わない。
イベントごとなどもほとんど土・日開催。
したがって、せっかくの休日でも友達と遊んだり、ライブに行ったりなどは出来ませんでした。
土曜・日曜と言えば、サービス業ではかき入れ時で休めないのは理解しているつもりでしたが、たまにはやっぱり土・日に休みたいと、いつも思っていました。
低給料
これは調理師のみなさんが通る道ですが、見習い時代はほんとに給料が低いです。
私が調理師専門学校を卒業して最初の就職先であるフレンチレストランでもらった給料は手取りで16万円でした。
個人経営のお店でしたので、福利厚生などはなく、その16万から年金や税金を自分で納めていました。
残った額から家賃と生活費を引くと、自由に使えるお金なんて本当に皆無でした。
当時、私は給料を時給に換算してひどく落胆したことがありました。
16万円、週に6日間働いていましたから、月間24日間。
160000÷24=6666
1日およそ6666円で働いていたことになります。
少なくとも12時間は働いていたので、6666÷12=555
1時間555円です。
東京都のアルバイトの最低賃金の約半分です。
アルバイトではないので、時給計算すること自体がナンセンスというか無意味なことかもしれませんが、正社員にもかかわらず、アルバイトの給料を大きく下回ることに当時はひどく落ち込みました。
3年後に、職場を移すのですが、その理由の一つが低給料であったことは事実です。
残業代がつかない
ただでさえ低給料なのに残業代がつかない何ていうのも調理師ではざらです。
残業自体は数えるほどあるのです。
残業代がつかないので、残業が嫌になり余計に仕事のモチベーションは下がってしまいます。
モチベーションが下がった状態で仕事をするものだから、必要以上に時間がかかってしまいさらに帰りが遅くなる。
まさに負のスパイラルです。
残業代さえ出れば、精神的にもっと健全に仕事が出来ると思うのですが、仕方がありません。
体力勝負
調理師の仕事がきつい理由は待遇面だけではありません。
実際の仕事面にもあります。
それが体力的な問題です。
調理師の仕事はずっと立ちっぱなしです。
その上、重い鍋を持ったり、フライパンを振ったり、包丁を握りっぱなしだったりと肉体的に負担をかけます。
職業病として、腰痛、腱鞘炎などが挙げられるほどです。
他にも、やけどや切り傷は日常茶飯事です。
刃物を扱う仕事なのである程度は理解していますが、改めて大怪我などのリスクを伴う危険な職場なのです。
また、夏場は、調理場が信じられないほど暑いです。
40度近く気温が上がります、そのため調理師は細目に水分補給をするなどの自己管理も求められます。
熱中症で倒れたとしてもおかしくはない環境下で働くことを強いられるのです。
料理を作らせてもらえない
お店の規模と方針にもよりますが、調理師見習いは料理を作らせてもらえないのが一般的です。
調理見習いがやることといえば、大量の仕込みに、皿洗いなどの雑用全般です。
お店によってはホール業務からスタートなんていうところも多いのです。
私の場合も初めての就職先では仕込みとまかない以外、一切料理を作らせてもらえませんでした。
シェフはプライドが高く、いつも自分一人で料理を作るような人だったので、見習いの私はずっと補助的な仕事ばかりしていました。
最初の1年ぐらいは、まだ入りたてで力もなく、仕方ないなと思っていたのですが、2年目以降になっても状況は全く変わりませんでした。
調理師である以上はやっぱり早く料理がしたいものです。
ある程度の我慢が必要ではあることも分かるのですが、1年も、2年もとなるとさすがに我慢するのがつらかったことが思い出されます。
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調理師の仕事がきついと感じた時の対処法
ここまで、調理師の仕事がきつい理由を具体的に6つ挙げました。
では、実際にそういうきつい状況下に置かれたらどのように対処すればよいのでしょうか。
調理師なら少なからず通る道です。
シェフと言われるような人もみんなこのようなきつい時期を耐え抜いてきて今があるのです。
そんなきつい茨の道を少しでも軽減できるように心構え(対処法)を考えましたのでどうぞ参考にして下さい。
長時間労働でも働いた分成長したと考える
どうしても長時間労働になりがちで休日も少なくなりがちな調理師の世界ですが、他の仕事ならもっと楽に働いていけるのでしょうか。
確かに、完全週休二日制の仕事なんて探せばいくらでもあります。
しかし、そういうところで働いている人たちも、ふたを開けてみると、休日出勤していたり、家でパソコン作業をしていたりと休みのようで働いている方も少なくありません。
まず、考え方として、調理師だけが、自分だけがこのような悪労働条件下で働いていると思わないことが重要になります。
その上で、毎日遅くまで働いて、働いた分成長しているんだと考えることです。
そのように考えることが出来れば、人と比較して嫌になることも無いのではないでしょうか。
それでも自分の我慢が出来ない場合は、職場を変えることを検討してみてもいいと思います。
調理師の世界にも週休二日のところでそこまで長時間労働ではない職場も中にはあります。
給食・企業の食事関係などがその筆頭に挙げられます。
長時間労働で休日が少ないことが苦痛で調理師を辞めてしまうくらいなら、職場を変えることを考えた方が絶対に良いです。
まかないが出るから実は食費にお金がかからない
確かに見習い時期の調理師の給料は低いです。
私も低給料については深く思い悩んだこともあったのですが、よく考えてみると調理師って低給料だけど、まかないが出るから食費にはお金があまりかからないんです。
その上、見習いとして色々な料理を教えてくれるシェフや先輩たちがいる。
料理を教えてくれて生活できるだけのお金がもらえる。
一人前の調理師を目指すならこれ以上にない環境なのです。
シェフにこんなことを言われたことがあります。
給料は16万と少ないけど、1万円でも貯金するなら、そのお金で食べ歩きに行きなさいと。
本当に、正解だなと思いました。
一人前になれば、お金はおのずと入ってくるものです。
見習いの修行中にはお金のことは考えずに料理のことだけを考えていればよかったのです。
そして、職場ではどんどん新しいまかないを作ることに努力して、休日は食べ歩きなどで他店の料理を研究するなどし続ければ、おのずと自分の腕も上がり、それが給料アップにもつながっていくのです。
料理を作らせてもらえないなら、まかないの腕を磨け
なんで調理師になったのに雑用ばかりで料理を作らせてくれないんだ。
誰もがぶつかる仕事の壁です。
しかし、シェフはちゃんとあなたのことを見ています。
なぜ料理を作らせてもらえないか、答えは簡単です。
まだあなたが料理を作るには早いからです。
単純に修行が足りていないのです。
仕込みの作業一つとっても、手を抜いてはいませんか?
作業に時間がかかり過ぎてはいませんか?
魚はきれいにおろせていますか?
シェフはちゃんと全てチェックしています。
そして、まかないです。
見習いが唯一料理が出来る貴重な時間です。
そんな貴重なまかない、毎日のことだからと適当に作ってはいませんか?
まかないが満足にできないのに、お店の大事な料理を作るのを任せてくれるはずがありません。
まかないは、みんなが食べてくれます。
そこでおいしい料理を出せるようになれば、「お前の作った料理はおいしいな」と認めてくれるのです。
何も、シェフはあなたに嫌がらせをして料理を作らせてくれないのではありません。
まずは、自分の実力不足を認め、しっかりと勉強をして、みんなに自分の腕を認めさせましょう。
料理を作ることが出来るようになるのはその後なのです。
料理を作らせてもらえないのであれば、それはあなたに何か足りないことがあるということです。
まずは、今何をすればいいのかを見極めて、周りに自分の腕を認めてもらう努力をしましょう。
調理師の仕事がきつい6つの理由まとめ
調理師の仕事がなぜきついのか、そして調理師の仕事のきつい点は何か、またその対処法がお分かりになりましたでしょうか。
以下、本日の記事をまとめましたのでご覧ください。
- 調理師の仕事はなぜきついのか
- 調理師の仕事がきつい理由6つ
- 調理師の仕事がきついと感じた時の対処法
調理業界全体が慢性的な人手不足に陥っているから
調理師の仕事は、長時間労働で休日が少なく低給料のうえ残業代がつかないことが多い。さらに仕事は体力勝負で始めのうちは料理も作らせてもらえない
調理師だけが長時間労働で休日が少ないわけじゃない。見習いの時期は修行だと割り切ってお金のことよりも料理の勉強を
調理師の仕事がいかにきつく厳しいものであるかが伝わったのではないかと思います。
実際にこれまで挙げてきた例が原因で調理師を辞める人もたくさんいます。
これから調理師になろうかと悩んでいる方には、ハンパな気持ちなら絶対にならないほうがいいと断言します。
それだけ、仕事がきつくて辞める人が多いからです。
しかし、そのきつい時期を乗り越えて一人前になった暁には、どこの職場に行っても活躍できるだけの実力をつけていることでしょう。
これから調理師を目指す人、または現在調理師として奮闘中の方へ、今回の記事が何かと参考になればと思います。
どうしても今の職場がきつい場合は、無理せずに転職も視野に入れて、転職活動を始めましょう。
なお、調理師の転職活動について、以下の記事で詳しく解説しています。
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